その後、熱運動する分子が隔壁を押して、隔壁の位置が変わると、板の隙間の位置も変わってきます。
そして、上下をつなぐ経路は閉ざされることになります。
先に(悪魔の装置(6)の頁で)、信号は2つの反射板に挟まれる形で待機している、と書きました。
その一方の端の反射板の位置は、下から上に信号が戻ってきた、その位置に相当します。
つまり、信号の経路は一巡しており、これで最初の「待機している状態」に戻ってきたわけです。
以上で「悪魔の装置」の全容が出そろいました。
「信号の経路は、一巡する閉じた輪になっている」、これは重要なポイントです。
信号の経路が閉じた輪になっていれば、
・信号を外界の熱ゆらぎから、完全に遮断することが可能となる。
・信号を動かすのに(理論上は)エネルギーを消費しない。
といったことが成り立ちます。
信号の経路を一列に並べて書けば、こんな風になります。
(待機状態)→ GATE[1] → 隔壁の移動 → GATE[2] →(一周して待機状態に戻る)
ここで、
GATE[1] と書いたのは、信号が薄い板の隙間を、上から下に通り抜ける箇所、
GATE[2] と書いたのは、信号が薄い板の隙間を、下から上に通り抜ける箇所のことです。
2つの GATE の開閉条件は、それぞれ次の通りです。
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GATE[1]:
・気体分子が箱の手前側(X座標の小さい方)にあって、
・隔壁が箱の奥側(X座標の大きい方)にあった場合だけ、
信号は上から下に通り抜ける。
GATE[2]:
・隔壁が箱の手前側(X座標の小さい方)にあった場合に、
信号は下から上に通り抜ける。
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GATE[1] には気体分子と隔壁の2つの条件があるのに対し、GATE[2] には隔壁の位置についての条件があるだけです。
つまり、GATE[1] には赤と青、2枚の板が関与するのに、GATE[2] には青い板だけが関与します。
隔壁が箱の手前側にあった場合、分子も必ず箱の手前側にあります。
それゆえ GATE[2] では条件が1つ省略できるのです。
図中では、GATE[2] の位置を GATE[1] よりも少し横にずらして(Y座標の大きい方に)描いてあります。