計算機実験
シミュレーション10&11:乱数による熱浴と接してみる
2007/12/20  

乱数によってエネルギーを交換し合う6個の分子から成る熱浴を用意し、それを左右の端の壁につなげた。 この状態で、左右の端の壁の振動は、常に熱浴からの攪乱を受けることになる。(シミュレーション10)

ここで「分子」と呼んでいるものは、シミュレーション上ではエネルギーの値を保持する1個の変数のことである。 分子6個の熱浴とは、エネルギーの値を保持した6個の変数があって、各変数間でエネルギーをランダムに交換しているものを指し示す。

また、比較のため熱浴を左右2つに分割し、右に分子3個、左に分子3個という状態でシミュレーションを行った。(シミュレーション11)

その結果、いずれの場合も正負の転送回数の差異が認められた。 シミュレーション10と11を比較すると、10の方が11よりも転送回数の差異が大きい。 シミュレーション11にはエネルギーが循環して流れる経路が存在しないので、10の方が11よりも転送回数の差異が大きい点については納得できる。 しかし、シミュレーション11の転送回数にも有意な差異が出たのは、予想に反した結果であった。

なぜシミュレーション11の転送回数にも差異が見られるのだろうか?
次の理由が考えられる。
・理由1: シミュレーションの精度が低い。
・理由2: 転送回数に差があったとしても、それが必ずしもエネルギーの流れに直結していない。
       つまり空回りしている。
・理由3: シミュレーション時間が十分ではなく、まだ平衡状態に達していない。

■ 理由1:の検証
同じシミュレーションを倍精度で実施したが、結果は単精度と比べて大差なかった。 (シミュレーション9までの結果は単精度) つまり、精度不足が理由ではなかった。

■ 理由2:の検証
一方向のエネルギーの流れが生じているかどうかを確かめるため、壁と熱浴の間で受け渡されたエネルギーの値を調べた。 シミュレーション10では予想通り、左右の壁で受け渡されたエネルギーの符号が逆(プラスとマイナス)であった。 つまり、1方向のエネルギーの流れが生じていた。
一方、シミュレーション11では、左右の壁で受け渡されたエネルギーにはっきりとした差異は見られなかった。 シミュレーション11では、転送回数の差異はあるのだが、エネルギーの流れは生じていない。 ということで、理由2:は成り立っていたのである。

■ 理由3:の検証
熱浴の大きさをもっと小さくすれば、シミュレーション11で見られた転送回数の差異は無くなるのではないか? これを確かめるために、熱浴の大きさを変えてみたのが次のシミュレーション12、13である。

   結果のグラフ

シミュレーション10: 6個の分子から成る熱浴 (倍精度)

シミュレーション11: 右3個+左3個の分子から成る熱浴 (倍精度)

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