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水飲み鳥の仕組み
2008/09/26  

第二種永久機関の話をする上で、水飲み鳥の話題は欠かせないでしょう。 水飲み鳥とは、写真のようなおもちゃです。

不思議なのは、水飲み鳥が電池でもゼンマイでもなく、気温の力だけで動いていることです。 もし気温の力だけで動いているのであれば、気温は無尽蔵にあるのだから、これは永久機関なのではないでしょうか。 水飲み鳥をたくさん、百個も千個も並べて動かして、その力でもって発電すれば、エネルギー問題は一挙に解決するのではないでしょうか。

残念ながら、水飲み鳥は永久機関ではありません。 水飲み鳥の原動力は何か、ということを端的に示せば下の図のようになります。

図の左側の区画には、コップに入った水が置いてあります。 右側の区画は乾いています。 中央の仕切り板は、空気は自由に通すが水は通さない特殊な板です。 もしこんな装置を作ったら、中央の板は水が空気中に散らばろうとする力で、右側に押されることでしょう。 これが水飲み鳥を動かしている力です。 つまり、水飲み鳥は「水が蒸散する力」で動いているのです。 その証拠に、水飲み鳥は湿度100%のときには動きません。

水飲み鳥は「水が蒸散する力」を巧みに利用しています。 水が蒸散することによって、水飲み鳥の頭の部分の温度が下がります。 いわゆる「気化熱」というやつなのですが、それではなぜ、水が蒸散すると温度が下がるのでしょうか。

その理由を簡単に図解すると、上の図の右側のようなります。 水の分子が周囲の大気を押しのけようとすると、その分だけ仕事をしなければなりません。 その仕事の分だけエネルギーを使うので、温度が下がるのです。

もう少し正確に言うと、気化熱で温度が下がる理由には
 1.周囲の大気を押しのける力
 2.水の分子同士の間に働く力をふりきるための力
の2つがあります。 上の図では2.の分子間力が描かれていません。 また、1.の「大気」の意味をよく考えてみると、それは空気そのものではなく、空気中に溶け込んでいる水のことを指し示すはずです。 それでも、個々の事情に目をつぶって大局を見れば、1.も2.も、どちらも「水がばらばらに散らばろうとする力」によって生じるのだということが分かるでしょう。

水飲み鳥は、気化熱によって生じたわずかの温度差を利用して動いています。 頭が冷たく、それに比べてお尻が温かいため、水飲み鳥の内部にある揮発性の液体(エーテル)は、お尻で蒸発して頭に昇り、そこで再び液化します。 こうして頭に液体がたまって重くなると、水飲み鳥はコツンッと傾いて「水を飲む」動作をします。 水飲み鳥が横になると、頭とお尻が水平にパイプで結ばれる格好になり、パイプを伝って液体がお尻の方に移動します。 液体がお尻に移動すると、お尻の方が重くなって、水飲み鳥は起きあがります。 以後、頭を冷やす水がなくなるまで、これを繰り返します。 ほんとによくできたおもちゃですね!

我が家にある水飲み鳥は、もう1年以上動き続けています。 (ときどき動かなくなる日もあったのですが。) 当初にくらべると、ずいぶんぼろっちくなりましたが、まだ現役です。 ふと見て驚いたのが、コップのふちが白くなっていたこと。 これ、ただの汚れかなと思って詳しく見てみたら、細かいヒビがたくさん入っていたんです。 毎日毎日、水飲み鳥がコツンッ、コツンッ、とやっていた振動が積もり積もって、こうなったんですね。 水飲み鳥本体の方には、ヒビは入っていませんでした。 「水飲み鳥ガラスをも穿つ。」

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