Turing Machine から分子モーターへのアプローチ ● STEP-0: ランダウアーの原理 (Landauer's Principle) 「演算自体には自由エネルギーを要しないが、メモリーをリセットする際にエネルギー散逸が欠かせない」 フレトキンゲートによって構成された可逆コンピュータから出発する。 また、悪魔についてのベネットの考察、 「エントロピー増大は観測ではなく、忘れるプロセスにある」 ことに言及する。 -- ここで、悪魔と演算装置が実質的に近しいものであることを述べておく。 ● STEP-1: たった1つのボールによって稼働するTuringMachineを考える。 たった1つのボールと「燃料テープ」によって演算可能なことを示す。 ・・・ここまでの主張はフレトキンゲートマシンと何ら変わることはない。 (フレトキンゲートマシンの主張を、1ballによって確認したことになる。  STEP-1 は本題ではないので、軽く、ちょっとした応用程度に語ること。  ・・・すでにフレトキンゲートを知っている立場からすれば、  1 Ball Turing machineの挙動はそれほど難しいことではない・・・) ● STEP-2: たった1つのボールによって、燃料テープ上に残されたガベージを消去することを考える。 そのためには ・ボールが最終的にはき出されるタイミングが不定になること ・クロックが必要であること を述べる。 ● STEP-3: 1 Ball Tuing Machine を「悪魔」に応用することを考える。 複数の箱の重さを順次測定し、中に粒子が入っているか否かを当てる装置を例に取る。 (ベネット流に、箱を可逆的に押してみて判断する、という方がよいだろう。) この装置では、測定に用いた 1 Ball の廃棄が問題となる。 方法1: ・まず Ball の出口をオープンにして、1 Ball の廃棄と、粒子によって得られた情報が (理想的には)等価だということを示す。 ボールの吐き出し口が時間的に広がってしまうので、永久機関にはなり得ない。 => この方法では、エネルギーを得ることは困難。 方法2: ・次に、BallをClosedなループ上を回したとき、ボールのエネルギー散逸なしに 利用可能なエネルギーが得られることを示す。 -- この場合、クロックに相当するものは何か? -- ボールがクロックの役目を果たしている。=> 話は STEP-4: へ。 方法1と2を比較して: 方法1では確定的な時刻にエネルギーを得ることができる(しかしBallの自由エネルギーを失う)のに対して、 方法2ではエネルギーが得られる時刻がどうしても不確定になってしまうことを示す。 装置を定期的、周期的に動作させることは不可能。 非周期的にならざるを得ないことを述べる。 以上より、方法2によってエネルギーが得られること、情報の流れとして矛盾が生じないことを示す。 -------------------------------------------- ● 計算速度について. 「理想的な可逆マシンは限りなく遅い。 現実的な熱ゆらぎにさらされた系では、エネルギー散逸が計算速度を決めている...」 この主張には釘を刺しておかねばなるまい。。。。 「時刻不確定」の方法によるエネルギー取得速度は、熱揺らぎや現実的なエネルギー散逸によらない。 本質的には、コントロール系の回る速さが速度を決めているはずだ。 => 速度の問題は、改めて詳しく取り上げる必要あり