クロック時間の最小単位は存在するか? 2004/05/06 古典的に時間は連続なもの、とすれば単位時間あたり(1秒あたり)にいくらでも多くの、 無限の情報量を詰め込むことができる。いくらでも「クロックアップ」することができる。 -> 連続体の情報量は定義できない。 しかし、量子的に考えれば「最短時間」が存在するはず。 2つの制限、プランク定数 h と 光速度 c がある。 ● プランク定数 hの制限 不確定性原理 ΔtΔE = h ΔEが大きければΔtはいくらでも小さくなるのだが、 ΔEは永久機関の1サイクルで稼ぎ出さねばならないので極端に大きくはできない。 時間を分割したクロック数 W = 単位時間 1 / Δt とすれば、 ΔE = kT ln W 最も小さい単位 ΔE = kT ln 2 を考える。 これ以上小さいエネルギーは熱揺らぎに埋もれて意味を成さない。 1秒あたり W = 1/Δt = ΔE / h = kT ln 2 / h クロック。 このとき、ΔEは2クロックに1回の割合で稼ぎ出されるので、 ★★ 最悪で2クロック、最良で1クロックだ。中間を取れば1.5クロック。 1秒に流れるエネルギーは W * ΔE = (kT ln 2 / h) * kT ln 2 * (1 〜 1/2) 次にエネルギー単位を大きくしたことを考える。 例えば3bit分 3ΔE = kT ln 8 を一度に取り出ときには、 クロックは3倍にアップするが、3ΔE取り出すためには 2^3クロック = 8クロックかかる。 つまりトータルで 3/8 となるわけで ΔE = kT ln 2 よりも損している。 つまり最大効率は「最も小さい単位 ΔE = kT ln 2」の場合。 時間が ΔE = 1 /Δt という逆数関数なのに対し、 分割は ΔE = kt ln W という対数関数になっている。 この逆数と対数の違いが、小さいΔEが有利に働く理由です。 k が 10^-23オーダー、h が10^-34オーダーだから、結果は目に見えて大きな値となるでしょう。 ところで。。。 上では ΔE = kt ln W 、例えば8クロックで3ΔE、という数え方をしていた。 しかし、例えばバイナリー検索といった手法を用いて3クロック内に8通りの場合の数を 押し込めることができればどうなるか? こうなると、単純にΔEが大きいほどΔTを小さくできるので 「いくらでも〜無限にクロックアップできる」ことになるだろう。 しかし物理的なセンスからするとこれは(濡れ手に粟ではあるが)いただけない。 1つには、永久機関サイクルから出るエネルギーには「必ず1パルス」という制限があると思う。 つまり、単純なコンピュータのbit表現なら 001, 011, 111, ... といった風に0と1の数は任意なのだが、 永久機関サイクルの場合は「1は必ず1個だけ」、つまり 001, 010, 100 の3パターンしか許されない。 なので、やはりΔE = kt ln W を認めて、物理的な限界をしくべきではなかろうか。 Planck's constant = 6.626068 × 10^-34 (m^2 kg / s) the speed of light = 299 792 458 (m / s) Boltzmann's constant (k): The number that relates the average energy of a molecule to its absolute temperature. Note: Boltzmann's constant is approximately 1.38 × 10^-23 J/K (joules/kelvin). 絶対温度: T(K)=t(℃)+273.15 -- 気温20℃ = 293.15K ln(2) = 0.693147181 1J = 1ニュートンの力が力に平行な方向に1メートル物体を動かすときのエネルギーを言う。 SI基本単位で表すと、kg m^2/s^2となる。 <<<1分子が1秒間に稼ぐことのできる最大エネルギー流量 >>> (kT ln 2 / h) * kT ln 2 * (1 〜 1/2) = (1.38 * 10^-23 * 293.15 * 0.69 ) ^ 2 / (6.63 * 10^-34) * (1 〜 1/2) = ( ( 1.38 * 293.15 * 0.69 ) ^ 2 / 6.63 ) * (10 ^ ( -23 -23 + 34 ) ) * (1 〜 1/2) = 11752.29 * (10 ^ -12) * (1 〜 1/2 ) = 11.75 * (10 ^ -9) (joules/s) 〜 5.88 * (10 ^ -9) (joules/s) <<< kT ln 2 に対する最大クロック数 >>> kT ln 2 / 2 h = 1.38 * 10^-23 * 0.69 / (2 * 6.63 * 10^-34) = ( 1.38 * 0.69 / (2 * 6.63) ) * (10 ^ (-23 + 34)) = 0.0718 * (10 ^ 11) = 7.18 * (10 ^ 12) (s^-1) 1 THz = 1000 GHz = 1000,000 MHz = 1000,000,000 KHz = 1000,000,000,000 Hz = 10^12 Hz だから、 7.18 Tera Hz ぐらい。 ● 光速度 cの制限 時間と空間は等価と考え、時間を距離に置き換える。 要するに ct だけの長さの箱に入った気体を考えるわけ。 長さ ct の箱に入った1分子がめいっぱい膨張したのが得られる最大エネルギー。 この場合でも、時間の長さに対するエネルギーは比例関係ではなく ln になる。 ところで、この場合、最小限どれだけの長さから ct まで膨らむか、 を考えなければならないので、やはり最小限の長さが必要になる。 最小単位を不確定性原理 ΔxΔp = h に求めると、 結局は上の考察と大差ないような気がする。。。 もう少し別の考え方。1 x 1 x ct の箱に1分子の理想気体が入っていた場合の エントロピーを出したらどうか。(この場合、エントロピーの0基準は絶対0度です) ΔS = 2/3 nR ln (V1 / V0) なのだが、最初の体積 V0 をどうする? もし絶対0度で体積0なら、ln(0) = -∞ だからだめ。やはり最小単位は欠かせない。 => 結局のところ、最小単位を決めるのはプランク定数 hです。 それにしても、時間の長さをctと考えれば、直感的にいって相当大きな値が得られるはず。 なにせ光速度なのだし。 ● 時間と長さの等価性より 1秒あたりどれだけつめこめるか、という問題は、つまりは1メートルあたり どれだけの情報量をつめこめるか、という問題と等価です。 無限大の精度があれば無限大の情報量が埋め込める。 ● プランク長、プランク時間 とか。 プランク長 lp = (G h~ / c^3) ^ (1/2) 1.6160(12) × 10^-35 (m:メートル) プランク時間 tp = (G h~ / c^5) ^ (1/2) 5.3906(40) × 10^-44 (s:秒) G : 重力定数 (gravitational constant) h~ : h / (2 Pi) -- ディラック定数と言うことがあるらしい。 G があることからもうかがえるように、量子重力理論 := 量子力学 + 一般相対論 から出たものらしい。。。はっきりいって、内容はパス。 ちなみに、この究極の「プランク・クロック」は 10^24 ヨッタ(yotta) 10^21 ゼッタ(zetta) 10^18 エクサ(exa) 10^15 ペタ(peta) 10^12 テラ(tera) 10^9 ギガ(giga) 10^6 メガ(mega) 10^3 キロ(kilo) ... 全然足らない。10^(-44 +24) でも、あと20桁。 つまり (1/5.3906) * 100000000000000000000 Yotta Hz ぐらいかな。 k の 10^-23 程度掛けても、まだまだゆとり。 ===============================================================================