実現しなかった状態 〜 光と影の法則について -- 統計力学の例外?メモの続き 長時間に渡って観測した系の状態が完全な熱平衡からずれる特殊なケースとは、 「壁などによって、系が全ての状態を巡ることを抑制した場合」である。 一番簡単な例は、気体を部屋の片隅に閉じこめ、残りの広い空間に出さないままにしておくこと。 考えられる全ての場合とは、気体が部屋の全体を巡ることだが、壁によって気体の全パターンが封じられている。 、、、これはあたりまえのこと。 +--------------+-------------------------+ | 気体はこっち | こっちには来ない | | 半分を巡回 | これを実現されなかった | | | 状態と解釈する | +--------------+-------------------------+ 当然、全体を巡回したのではほとんど実現不可能な「片側に集中した」状態を、 壁はずっと維持し続けているわけだ。 これを ・壁によって、特殊なパターンだけを守って維持している。 ・壁によって、全てのパターンのうち一部をマスクし(影)、残りのパターンだけを残す(光)。 と解釈する。 --> 一般化すると、、、 熱平衡からずれた系は(非平衡という意味ではない、壁によって抑えているという状態)、 「抑制された、本来なら通るべきパターン」が隠されているのである。 いま実現しているパターン(光) + 抑制された隠れパターン(影) = 熱平衡の状態、全パターン このあたりまえを前提として、もう一歩進んだ事例が考えられる。 コントロール系と対象系の2つの復号系を考える。 コントロール系は、対象系のスイッチON/OFFを行うだけ。(壁の出し入れをするだけ) 実際のエネルギーや物質のやりとりは一切行わない。 ・・・ボールによって巧妙に対象系をコントロールする仕組みを考える。 これは「対象系が山の頂点に来たとき、コントロール系が長時間それを抑えに回る」といった装置のイメージのこと。 このようなコントロール系によって、何もなければめったに山の山頂状態が実現しない対象系を、 長く山頂に留めておくことができる。 * コントロール系 G = Gate : 対象となる力学系が山の上にあったときに開く H = 対象となる力学系の隔壁をON,OFFするスイッチ <-隔壁ON - - 隔壁OFF -> |--------------------------- 長〜い -------------------------------|H|G|-----短い----| <--------------ここの往復には10万年かかる ------------------------>|H|G|<-ここは一瞬-> 対象が山の上にある時間は、少なくとも20万年加算される. 対象が山麓にあるとき。 山の上に来た瞬間を逃さぬよう、高速スキャンしている。 ここで考えたコントロール系が意図した通り機能するのは、  組み合わせA:「対象系が山麓にある x コントロール系のボール(信号)が短い方にある」 という組み合わせが成立しているときである。 ここで、もしボールが隔壁の反対側に出てしまって  組み合わせB:「対象系が山麓にある x コントロール系のボール(信号)が長〜い方にある」 という組み合わせになったとしたら、どうだろうか。 今度は、対象系が山頂にとどまる時間は、組み合わせAとは逆になり、熱平衡の場合よりも山頂にとどまる時間が短くなる。 組み合わせA: 山頂にとどまる時間は、熱平衡より長くなる 組み合わせB: 山頂にとどまる時間は、熱平衡より短くなる A+Bの両方: 熱平衡と同じになる。 ここに Aで長くなった分 + Bで短くなった分 = 熱平衡 Aで長くなった分 = −(Bで短くなった分) といった、単純な法則がある。 コントロール系によって、熱平衡からずれた状態が実現できるということに疑問を感じた向きもあるだろう。 しかし、これは不自然な話ではない。 コントロール系とは、要するに  ・仕切の壁と同様、ある種のパターンの実現を押さえ込んでいる。  ・対象系と直接的なエネルギーのやりとりをしていないが故に、古典力学的な方法で動作を制御している。 もののことである。 -------- コントロール系の取り得るあらゆる場合のうち、特定の組み合わせだけが行われる場合に、 系全体の熱平衡からのずれが起こる。 考えられる全組み合わせとは。。。 コントロール系の全パターン x 対象系の全パターン ところが巧妙なコントロール系は コントロール系の一部のパターン x 対象系の一部のパターン しか実現しないように、うまく信号ボールを操作している。 信号ボールが間違って、壁を越えた反対側に入ってしまうとコントロール系は「死んでしまう」。 「死んでしまう」とは、ちょうど壁を破って気体を自由膨張させるように、コントロール系がいままで抑制してきたパターン側に入ってしまうこと。 「alive」な、「生きている」コントロール系 <-> 「dead」な「死んでいる」コントロール系 コントロール系x対象系、体系の取り得る全パターンのうち、一部だけしか許可しないようなコントロール系は「生きている」。 コントロール系と呼べるものには、必ず何か実現させないような「抑制パターン」が存在し、それゆえに動作(コントロール)ができる。 実際に実現しなかったパターンが「影の部分」であり、実際に実現している「光の部分」と合わせると、全体で熱平衡パターンとなるのだ。 だから、実際に実現しているものを熱平衡からずらそうとすれば、どこかに「影の部分」を作らねばならない。 コントロール系とは、対象系とは直接熱エネルギーのやりとりをしないので、古典力学的な仕組みで「影の部分」を作ることが可能になったものである。