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2008/02/26  

熱運動で動く分子モーターに課される制限は3つある。

1.出力に不確定な要素が含まれている。
2.結果を永続的に残すことはできない。
3.一定時間内に取り出されるエネルギーの大きさには上限がある。
Rule11.についてはこれまで見てきた通りだ。
この制限から、さらにこんなことがわかる。
    分子モーターを単純に100個合わせても、出力は100倍にはならない。
なぜかっていうと、100個集めて平均をとると“不確定な要素”が緩和されてしまうから。
なので、小さな分子モーターをたくさん集めて大きな物体を動かすことは、かなり難しい。

2.の制限も、パターン数のルールから導くことができる。
もし分子モーターから取り出された仕事を使って、何か永続的な結果を残したなら、世の中全体のパターン数が減少することになる。
なので、分子モーターの仕事は“一時的にしか”使うことができない。

Rule2

Rule33.の制限は、どこまで時間を細かく分けられるか、ということに関係する。
物理的に、時間には(正確には時間xエネルギーの大きさには)最小限の大きさがある。
そのため、一定時間内に織り込めるパターン数にも上限が定まることになる。

こうして見ると、できないことだらけのようにも思えるけれど、
元がただの熱運動なのだから仕方ない。
逆に言えば、この3つの制限をクリアーすれば、熱運動は立派に利用できる。

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