2 min.
ところで、熱運動で動くモーターって、何が目新しいのだろう。
自動車のエンジンも、蒸気機関も、火力発電所も、どれも熱を利用して動いている。
いまさら熱で動くモーターがあっても、別に驚くことはないんじゃないか。
いや、ここで言っているモーターは、自動車のエンジンとはかなり違ったものなんだ。
エンジンのような普通の熱機関には、必ず暖める部分と冷やす部分がある。
燃焼室とラジエーターのように。
高温から低温への熱の流れがあって、初めてそこから仕事が取り出せる。
たとえ熱だけがあったとしても、もう一方に冷やす部分がなければエンジンを動かすことはできない。
もし冷やすことなしに、熱だけでエンジンを動かすことができたらどうなるか。
それができれば、なにもガソリンや石炭を燃やす必要はない。
身の回りの気温を使って、いくらでもエンジンを回すことができるだろう。
つまり、気温からエネルギーが、ただでいくらでも手に入ることになる。
そんなうまい話はありっこない。
身の回りの熱だけから無尽蔵に仕事を取り出す仕組みのことを「第二種永久機関」と言う。
そして、永久機関は不可能、というのが物理学の結論だ。
だから、普通に考えれば、熱運動を直接利用したモーターというのは実現不可能なんだ。