Maxwellの悪魔、Szilardの悪魔など一連の考察の延長であるこの問題には、不可能という以外の別の答が存在する。 その答を示すのが本章の目的である。
答となる方法は本章の最後に示すが、その前に私自身が答に至るまでに経た試行錯誤の過程を提示しておいた。 ちょうど熱力学におけるカルノーサイクルが理想的な前提の上に成り立っているように、ここで示そうとする答も多分に理想化されたものである。 それ故、ここで示す答はわかりずらく、また受け入れ難い面を持つ。 ただ、ひとたび不可能という既成概念をうち捨て、答が存在することさえ認めてしまえば、この問題を解くこと自体は決して法外に困難ではない。 よくできたパズルを楽しむような心持ちで、自ら答を導き出すのが理解に至る最良の道であろう。